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森鷗外の現代小説
不平等のなかの対等
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2021年3月30日
- 書店発売日
- 2021年4月6日
- 登録日
- 2021年3月12日
- 最終更新日
- 2021年3月29日
紹介
テクストの声を聴く。
その後ろには、声を発せざるを得ない文化的コンテクストが広がっていた。
解析と調査を接続させた森鷗外現代小説の研究。
人種・職業・教育・思想……さまざまな差異から生まれる不平等。自己と他者の間に混在するものに向き合い、寄り添い、対等な関係性を求めるという特質に貫かれた、鷗外の現代小説を緻密に読み解く。
目次
Ⅰ●対等への志向
1 人種・経済・政治の平等に向けて
2 下位者に寄り添うこと
3 被抑圧者の受容
4 「沈黙の塔」「食堂」『うた日記』
Ⅱ●人種
「大発見」論―「欧羅巴人も鼻糞をほじりますよ」―
1 問題のありか
2 公使の発言に対する「僕」の反応
3 鼻糞をほじるヨーロッパ人の正体
4 「僕」の見落とし
「花子」論―ロダンが見た〈花子〉―
1 問題のありか
2 花子に対するロダンのあり方
3 ロダンに対する花子のあり方
4 語り手のあり方
Ⅲ●職業
「吃逆」論―「芸者を人間扱にすると云ふこと」―
1 問題のありか
2 対等への関心
3 対等の実現
4 オイケン思想の実現
「里芋の芽と不動の目」論―階層の拘束力―
1 問題のありか
2 「己の意志」の絶対化
3 化学工の生計状態
4 「己の意志」の内実
5 宴席の空間
Ⅳ●下層社会
「仮面」論―「高尚な人物」と「本能的人物」―
1 問題のありか
2 「本能的人物」とは何か
3 「仮面」とは何か
4 戯曲の構造
「牛鍋」論―「本能」と『相互扶助論』―
1 問題のありか
2 「本能」における正負
3 クロポトキン『相互扶助論』の受容状況
4 『相互扶助論』における「本能」
5 ダーウィン『人間の由来』との関連
Ⅴ●欲望
「鶏」論(一)―石田小介の哲学―
1 問題のありか
2 元部下・商人・別当に対する石田の言動
3 石田の生活形態
「鶏」論(二)―乃木表象との関連―
1 石田小介と乃木表象の類似点
2 石田小介と乃木表象の相違点
Ⅵ●制度
「蛇」論(一)―現場の論理―
1 問題のありか
2 観念を絶対化する人々
3 「理性」への信頼
4 「己」の状況判断
5 「解決」の不要
「蛇」論(二)―普通選挙の平等性―
1 問題のありか
2 「下の下までの人間」の意味
3 普選を是とする根拠
4 「多数政治」という語の流通
5 「égalité」と「里芋の芽と不動の目」
あとがき
初出一覧
索引
前書きなど
明治四二〔一九〇九〕年から大正二〔一九一三〕年にかけて発表された森鷗外の現代小説を概観してくると、一つの特質が見えてくる。それは、自己と他者との間にある差異、それらが生む不平等性に対する敏感な反応である。目前の不平等性にどう向き合うかという探究は、長編小説も含めて森鷗外の現代小説に横断的に存在する問題意識であると考えられる。(「Ⅰ 対等への志向」より)
上記内容は本書刊行時のものです。