平安朝国史和歌注考
『日本後紀』『続日本後紀』『三代実録』 付『東大寺要録』
- ISBN
- 978-4-909832-20-7
- Cコード
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C3092
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専門 単行本 日本文学詩歌
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2020年10月31日
- 書店発売日
- 2020年10月29日
- 登録日
- 2020年9月16日
- 最終更新日
- 2020年10月26日
紹介
万葉集から古今集へ流れゆく時代の、和歌史空白期を埋める総合的注釈!
平安京遷都後の初期百年間を、文学史的にどのように位置づけるか。
「国史」にある和歌資料を整備し、注解、考察した画期の書。
目次
はじめに―本書解題
凡例
第一章 延暦(桓武天皇)期の和歌
一、延暦宴歌考―後期万葉集からのまなざし
はじめに
一 曲宴歌における天皇の位置
二 遊猟の宴における天皇の位置
三 遣唐使送別の宴における天皇の位置
おわりに
二、桓武天皇の和歌各論―『日本後紀』の七首
①延暦十四年四月十一日(曲宴)―「古の野中ふる道……」
②延暦十四年四月十一日(和歌)―「君こそは忘れたるらめ……」
はじめに――天皇歌(古歌)と和歌
一 語注と考察
二 歌の背景
三 古歌「古への野中ふる道」
四 和歌
おわりに
③延暦十五年四月五日(曲宴)―「今朝の朝け名をと云ひつる……」
はじめに―ホトトギスの鳴声
一 語注およびその考察
二 ホトトギス歌の百年
おわりに
④延暦十六年十月十一日(曲宴)―「このごろの時雨の雨に……」
はじめに―残菊を詠む
一 語注と考察
⑤延暦十七年八月十三日(遊猟)―「今朝の朝明け鳴くちふ鹿の……」
はじめに―「遊猟」の宴歌
一 語注と考察
二 補考
三 喩としての『鹿鳴』詩
四 天皇歌の周辺、及び歌の特徴
おわりに
*追考 万葉歌の伝聞表現における時制の問題
はじめに
一 歌と語注
二 時間表現としての「今朝の朝明け」
三 伝聞表現内の時間の諸相
⑥延暦二十年正月四日(曲宴)―「梅の花恋ひつつをれば……」
はじめに―正月雪の日の曲宴の歌
一 語注と考察
二 宴の主題について
おわりに
⑦延暦二十二年三月廿九日(餞宴)―「この酒は凡にはあらず……」
はじめに―遣唐使送別の宴歌
一 語注と考察
二 和歌語注
三 補考―読解のために
四 「賜餞」と歌
おわりに
第二章 大同(平城天皇)期の宴歌
一、平城天皇の周辺
二、和歌各論―『日本後紀』の三首
①大同二年九月二十一日(皇太弟頌歌)―「みや人のその香に愛づる……」
②大同二年九月二十一日(天皇和歌)―「折り人の心のまにま……」
③大同三年九月十九日(平群賀是麻呂奉献歌)―「いかに吹く風にあればか……」
第三章 弘仁(嵯峨天皇)期の遊宴歌
一、嵯峨・淳和天皇の周辺―文業の場
二、和歌各論―『日本後紀』の二首
①弘仁四年四月二十二日(藤原国人献上歌)―「今日の日の池のほとりに……」
②弘仁四年四月二十二日(天皇和歌)―「ほととぎす鳴く声きけば……」
第四章 承和・嘉祥(仁明天皇)期の賀宴和歌
一、仁明天皇の周辺
二、和歌各論―『続日本後紀』の三首
①承和十二年正月八日(尾張連濱主舞楽奉献時和歌)―「ななつぎの御代にまわへる……」
②承和十二年正月十日(尾張連濱主舞楽奉献時和歌)―「翁とてわびやはをらむ……」
③嘉祥二年三月二十八日(仁明天皇四十賀奉献長歌)―「日本のヤマトの國を……」
凡例
【ⅰ 仁明天皇四十賀奉献長歌前文】
【ⅱ 仁明天皇四十賀奉献長歌本文】
【ⅲ 仁明天皇四十賀奉献長歌後文】
小括
【ⅳ 仁明天皇四十賀奉献長歌補注】
補注緒言
A 前文より
(1)浦島子伝
(2)柘枝伝
B 長歌より
(1)構成
(2)枕詞の問題
ⓐ古語的枕詞の例として(13ヤチグサニ・14アカネサシ・68アカネサス・69 ヌバタマノ・16ヒサカタノ)
ⓑ倣古語の例として(5オキツナミ・125タビビトニ)
ⓒ第五段後半部に集中する修辞的表現の特色(149ミドリゴノ・150ヲリハシノ・151ミダレイトノ・153トコヨカリ・154サヲシカノ)
(3)語誌 5「毎年尓」(トシノハニ)の訓みと語義について
C 後文より
(1)古語
小括
第五章 平安朝国史童謡三題
一、はじめに
二、童謡各論―『日本後紀』『続日本後紀』『三代実録』
①大同元年四月七日(桓武天皇登祚の童謡)―『日本後紀』の一首
②承和九年八月十三日(恒貞親王廃太子時の童謡)―『続日本後紀』の一首
③清和天皇即位前紀(三超の童謡)―『日本三代実録』の一首
付章 天平勝宝四年(孝謙天皇)四月十日―『東大寺要録』中の和歌四首
一 東の山辺を清み
二 法の下花咲きにたり
三 源の法の興りの
四 美しと我が思ふ君は
初出一覧
あとがき
平安朝国史和歌各句索引
前書きなど
「書名を解題しておきたい。……平安京遷都後の百年間を文学史的にどのように印象づけられるのか、的確なネーミングがいまだ見いだせない。今、ここにかろうじて和歌文学の流れを継承する資料が、『日本後紀』・『続日本後紀』・『三代実録』(『文徳実録』には和歌資料がみられない)の三部の「国史」に見いだせる。よって……俯瞰的な観点から、文学領域を取り出そうとする時に、時代的な区分としては明瞭な「平安朝」を用い、副題を添えて平安朝初期の和歌資料であることの印象を示そうと企図したものである。」……「はじめに――本書解題」より
版元から一言
『六国史』中の和歌に「総合的注釈」が施されるのは、『続日本紀』以降の和歌を注釈した鹿持雅澄の『南京遺響』(1821年)以来200年ぶり。