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ところで軍国少女はどこへ行った
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2019年4月15日
- 書店発売日
- 2019年4月15日
- 登録日
- 2019年3月13日
- 最終更新日
- 2019年4月14日
紹介
戦争がはじまったとき,少女は小学校低学年だった。工場動員は免れた。その代わり、校庭に薩摩芋を植えたり、人手不足の農家に農作業の手伝いに行かされたりした。その頃歌われた『学徒動員の歌』、すなわち、「君は鍬取れ、我は鎚、戦う道に二つなし」という戦時歌謡さながらであった。こんな歌に励まされ、お米や野菜を作ることは重要だと思っていたから、とにかく真面目に働いた。何しろ、この戦いは正しく、神州は不滅であると教え込まれていたから、どんなに敗け戦が続いても、日本が敗けるなどとは考えもしなかったのである。
こうした「戦争観」の中で、少女たちは「少国民」となり、「軍国少女」へと成長した。こうした「日本観」は、「皇国史観」に基づく「日本国史」の授業で、しっかりと形成されていた。それに、勇壮で覚えやすい戦時歌謡は、少女たちの心を揺さぶり、「正義のための聖なる戦い」を疑うこともなかったのである。
今,大人になった少女が「日本国史」と「戦時歌謡」を取り上げて、自分自身を語ってみようと考えたのは、こうした所似に他ならない。そして、このことは、「私」という一人の子どもの物語でありつつも、あの時代を生きた同世代の女たちにとっても、共有される物語に他ならない。
目次
はじまりのことば
第一部 戦時下の学校教育
第一章 「日本国史」の教育力
⑴ 「縄文」も「弥生」も知らない子どもたち
⑵ 「ヤマトタケル」の物語
⑶ 南北朝と後醍醐天皇
⑷ 吉野の行宮に集った「いい人」たち
⑸ 護良親王異聞
⑹ 天皇のよしあし
⑺ 私にとっての「いい人」たち
⑻ 大政を天皇に返した徳川最後の将軍
第二章 私たちの万葉集
⑴ 撃ちてし止まむ
⑵ 防人のうた
⑶ 大君の辺にこそ死なめ
⑷ 生ける驗あり
⑸ 自分勝手な「万葉集」
第三章 子どもたちの「唱歌教育」
⑴ 四大節の歌
⑵ 唯一無二の日本
⑶ チョクゴホートーカ(勅語奉答歌)
⑷ 日本を讃える歌
⑸ アジアの盟主
第二部 戦時歌謡と子ども
第一章 歌の力・歌詞のイメージ
⑴ 音楽を動員せよ
⑵ 映画とその主題歌
⑶ 唱歌コンクールと戦時歌謡
⑷ 唱歌コンクールと教科書の歌
⑸ 従軍看護婦ごっこ
⑹ ハニホヘトイロハ
⑺ 戦時歌謡と兄弟喧嘩
⑻ 「 私」の愛唱した戦時歌謡
⑼ 「任侠もの」の隠れ流行
⑽ 靖国神社の歌
⑾ 連合艦隊司令長官の死
⑿ 桜とアリラン
第二章 子どもの戦争体験
⑴ 歌詞の力
⑵ 選民思想と日本神国論
⑶ 戦時歌謡の巧みさ
⑷ 替え歌のこと
⑸ 拡散者としての子ども
⑹ 子どもたちの戦時歌謡
⑺ 戦時歌謡と遊び歌
⑻ 戦時歌謡と私
第三章 私という子どもの戦時観
⑴ 辞 世
⑵ 食べ物のこと
⑶ 母の江戸褄
⑷ もんぺと救急袋
⑸ 愛国百人一首のこと
⑹ 陸軍情報局推薦の映画鑑賞
⑺ 戦争ごっこ
⑻ 弟妹を哀れむ
⑼ 真面目だった「母」の真面目だった「子ども」
⑽ 文語体の活用
第三部 軍国少女はどこへ行ったか
第一章 私の戦後体験
⑴ 戦いすんで日が暮れて
⑵ 子どもは一直線
⑶ 男女同権
⑷ 洋書のこと
⑸ ダンスパーティー
⑹ 皆で旅行をしましょう
⑺ ところで軍国少女はどこへ行った?
版元から一言
戦争が始まったとき少女は小学校低学年だった。この戦いは正しく神州は不滅であると教え込まれていたから、どんなに敗け戦が続いても日本が敗けるとは考えもしなかった。少女たちは「少国民」となり、「軍国少女」へと成長した。こうした日本観は、「日本国史」の授業でしっかりと形成され,勇壮で覚えやすい「戦時歌謡」は、少女たちの心を揺さぶり、正義のための聖なる戦い」を疑うこともなかった。今,大人になった少女が「日本国史」と戦時歌謡」を取り上げて、自分自身を語ってみようと考えたのは、こうした所似に他ならない。
上記内容は本書刊行時のものです。